視力検査
普段の生活にはほとんど眼鏡を使わないくらい困らないのに、裸眼で受ける視力検査のときは、すこぶる結果が悪い。
小さな頃からずっと。
父親の眼鏡をなにかの拍子で掛けたときに、「あれ!なんかよく見える」と話したときに、自分が『乱視』なのだと知った。父親の眼鏡は乱視用の物だったから。
小さな頃から、寄り目をしなくても寄り目の状態をなんとなく意識的に作れた。
夜道の電灯は薄ぼんやりと広がって、絵に描いたように大きく光っていた。
月はたまになにかが重なって見えた。
ずっとずっと。私の目は、乱視を通して世界を見てきた。
自分の眼鏡を作ってもらったとき、目に見えた景色は、初めて見るものみたいだった。
眼鏡を通すと色んなものがくっきりと見える。なのに、眼鏡を外す。光が通常よりも大きく広がって見える電灯も、月も、なんだか私はその景色が好きなのだ。